長期投資ではシャープレシオに基づくローテーション戦略がおすすめか

長期投資ではシャープレシオに基づくローテーション戦略がおすすめか

投資の勉強をしていると、長期・分散・積立投資が最強の投資方法だと紹介されていることが多いです。

ただ、よし長期・分散・積立だ!と投資を始めても、下記のような疑問点もでてきますよね。

  • 積立NISAで全世界株式を買っているけど、これで十分に分散できているのか?
  • 何も考えずに毎日/週/月買うよりも高い運用効率の長期投資方法はないのか?
  • 債券や金・銀などのコモディティも買うべきなのか?
  • ETFで長期積立するなら何をどの比率で買うべきなのか?

そこで、この記事では上記の疑問への答えの一つになるかもしれないシャープレシオに基づくローテーション戦略について説明します。

この記事のポイント
  • ローテーション戦略によって、株式ETFのみに投資するよりリターンの増加、暴落率の低下、リスクの低減が得られる
  • ただし、ローテーション戦略の完全な実行は、心理的に難しい
  • ローテーション戦略の一部を取り入れた方法が良いかもしれない

基本的にこちらの記事を参考にしているので、詳細が気になる方はぜひ見てください。

ETF ROTATION STRATEGY USING SHARPE RATIO

ローテーション戦略とは

この記事で紹介するローテーション戦略(rotation strategy)とは、上昇トレンドの市場を追う戦略のことです。

株式が上昇トレンドのときは株式に投資し、しばらくそのまま保持します。

そして、債券が株式よりも上昇トレンドになったときには株式から債券に投資先を交替(ローテーション)し、またしばらく保持します。

その時のトレンドに応じて投資先をローテーションすることから、ローテーション戦略と呼ばれています。

ローテーション戦略は、モメンタム戦略やセクターローテーション戦略とも呼ばれるよ!

ローテーション戦略の考え方は非常に簡単ですが、どのように上昇トレンドにある市場を見極めれば良いのでしょうか?

そこで登場するのがシャープレシオ(sharpe ratio)と呼ばれる指標になります。

シャープレシオとは

シャープレシオは、投資対象(投資信託、ETF、株など)のリスクに対する収益率を示します。

基本的にシャープレシオが大きいほど運用効率が良いと判断され、投資信託やETFを購入するときの選択基準のひとつとして利用されています。

シャープレシオSRの計算式は下記になります。

$$SR=\frac{投資対象の収益率の期待値 – 無リスク資産の金利}{投資対象の収益率の標準偏差}$$

式を理解するのには時間がかかるので、とりあえずここでは下記の理解で十分です。

  • シャープレシオが大きい:投資対象の収益率が高く、収益率のブレが小さい
  • シャープレシオが小さい:投資対象の収益率が低く、収益率のブレが大きい

シャープレシオの式について理解を深めたい場合は、下記をご参考ください。

ローテーション戦略でのシャープレシオの使い方

それでは、実際にどのようにシャープレシオを利用すれば良いのでしょうか?

利用方法は非常に簡単です。投資対象と決めたETF(例えば株式SPY、債券TLT、金GLD)それぞれに対して、直近数カ月 or 数週間 or 数年のスパンでのシャープレシオを計算し、一番シャープレシオが大きいETFに投資するだけです。

ある時点において、シャープレシオの観点から見た最良のETFに投資するということですね。

シャープレシオの計算に利用する期間について

上記では、直近数ヶ月 or 数週間 or 数年と言いましたが、実際にはどの程度が良いのでしょうか?

冒頭に紹介した元の記事では複数の条件でバックテストが行われており、結論として直近3ヶ月が良いとされています。

考慮する期間を1ヶ月にしても6ヶ月にしても、ローテーション戦略が優れているという結論は変わらないよ!

バックテストの詳細な条件を知りたい方は、リンク先の記事を読んでください。

(ちなみに)なぜシャープレシオでトレンドを確認するのか

おまけ話ですが、トレンドの見極めになぜシャープレシオを使うのかという話です。

自分は、株式ETFと債券ETFといった異なる性質のETFを比較するために都合が良いからシャープレシオが使われていると考えています。

収益性のみを考慮すると株式ETFは債券ETFよりも優秀なことが多いです。一方で、リスクのみを考慮すると株式ETFよりも債券ETFのほうが優れているでしょう。

シャープレシオは、収益をリスクで割ることで1単位あたりのリスクに対する収益を示すことができる指標です。

株式や債券といった異なる性質のETFだとしても、1リスクあたりの収益で比較することが可能になるので、シャープレシオが使われているのだと思います。

もちろん、シャープレシオ以外は駄目ということではないと思います。

ただし、異なる性質のETFを比較することが可能な指標をトレンドの見極めに利用するべきだと思います。

具体的なローテーション戦略とその効果

大雑把にローテーション戦略の概要を説明しましたが、ここではより具体的な方法についてと、実際にどの程度収益が向上するのかについて説明します。

参考にした記事の一部分をとってきているので、より細かい実験結果を見たい方は、元の記事をご確認ください(ETF ROTATION STRATEGY USING SHARPE RATIO)。

具体的なローテーション戦略

今回のバックテストで利用されるETFは下記です。

  • SPY:S&P500を対象とした株式ETF
  • EFA:米国・カナダを除く先進国の大型・中型株式ETF
  • GLD:金ETF
  • TLT:長期米国国債ETF(キャッシュフィルターとして利用)

この内、ローテーション戦略の対象となるのはSPY・EFA・GLDで、TLTはキャッシュフィルターに利用されます。

ポイント

SPY・EFA・GLDの中で最も優れた(シャープレシオが高い)ETFが150日の単純移動平均を下回っているときには、キャッシュフィルターを投資先にします。

暴落時には比較的安全資産とされている国債に投資するということですね。

シャープレシオは直近3ヶ月の株価から計算します。

バックテストの結果

バックテストの期間は、2005年1月から2015年1月です。

結果は下表です。(参照はこちら

戦略年平均成長率シャープレシオリスク暴落率
SPY(S&P500)のみ8.45%0.5119.57%55.44%
ローテーション戦略20.94%1.1617.75%24.44%

平均成長率のみではなく、シャープレシオ、リスク(Volatility)、暴落率(DrawDown)も改善されています。

非常に強力な方法であることがわかりますね。

まとめ

ローテーション戦略の方法と、それが収益を大幅に改善する方法であることを述べてきました。

個人的な感想としては下記です。

  • バックテストからローテーション戦略が非常に強力なことは確か
  • 一方で、資産を株式から債券に全てローテーションする方法は、心理的に実行しにくい
  • 株式ETF(VTI・VEA・VWO等)、金ETF(GLDM)、国債ETF(EDV)などを組み合わせて、一部をシャープレシオに基づいてローテーションするのはあり

自分は、今回のバックテストで行われているような、全額をローテーションするのは心理的に実行しにくいです。

一方で、トレンドに乗るという考え方には賛成ですし、数値的にも改善されているので、ローテーション戦略自体には悪い印象はありません。

なので、VTI・VEA・VWO・GLDM・EDVなどに対して、長期でコツコツ積立を行い、一部をローテーション戦略で投資先を変えていくという方法が良いかなと感じました。