SynologyNASにおけるS3 Glacierの利用料金を実例から紹介

SynologyNASにおけるS3 Glacierの利用料金を実例から紹介

前回の記事ではSynology NASでS3 Glacierにバックアップする方法を紹介しました。今回は、実際にどのくらいのデータのときにどのくらいの利用金額がかかりそうなのかを見積もる方法を紹介します。

この記事では、まずGlacierの料金体系について説明します。その後に、Glacierの利用料金を見積もるために、NASからGlacierへの実際のバックアップログを確認していきます。ファイルの種類やサイズに応じて、バックアップの挙動がどのように異なるのかも紹介していきます。

先に結論ですが、下記のようなデータ容量とアップロードリクエスト数でした。

バックアップファイルの種類や数データ容量アップロードリクエスト数
34個のテキストやPDF(全部で4M)NASとGlacierでほぼ同等34回
3個の画像(3~4MB)NASとGlacierでほぼ同等4回
1個の動画(1.9GB)NASとGlacierでほぼ同等5回

料金は定期的に変わっているので、最新の料金はAWSの公式サイトで確認してください。この記事は、2021年2月20日時点での情報です。

S3 Glacierの料金体系

Glacierの料金は単純にデータ容量のみでは決まりません。データ容量に加えて、アップロードリクエスト数や取出しリクエスト数など、いくつかの課金条件があります。今回は、SynologyNASのデータをバックアップすることがGlacierの利用目的なので、関係のありそうな下記3点について説明します。

  • ストレージ料金
  • アップロードリクエストの料金
  • 取り出し料金 & 取り出しリクエストの料金

気にするべきポイントとして、リージョンによって利用料金が異なります。特にこだわりがない場合、安いリージョンを利用しても問題ありません。日本よりもアメリカの方が安い傾向にあるので、アメリカリージョンが良いかもしれませんね。

以降では、上記の3種類の料金について詳しく見ていきます。対象リージョンは米国西部(オレゴン)とします。また、利用料金はドル計算なので、為替の影響を受けることは念頭に置いておいてください。

ストレージ料金

ストレージ料金は、Glacierに保存しているデータ容量に対して課金される月額の料金です。Glacierでは、ここの金額が非常に安いです。

2021年2月21日の時点で、GB/月 あたり 0.004USDです。1USD = 105.52円なので1GB = 0.42円/月の計算になります。いくつか具体例を出してみます。

  • 100GBを保存:0.42円 × 100GB = 42円
  • 1000GBを保存:0.42円 × 1000GB = 420円
  • 2000GBを保存:0.42円 × 2000GB = 840円

これだけだとお得かどうかわからないので、他の主要なクラウドストレージサービスの料金と比較してみます。これらのサービスはGlacierと性質が異なるので素直な比較はできないのですが、参考にはなると思います。

  • Dropbox Plus(2TB):1,200円/月
  • Google Premium(2TB):1,300円/月
  • One Drive Microsoft 365 Personal(1TB,オフィス込み):1,284円/月

Glacierが安いですよね。また、金額以外のGlacierの良い点は利用したデータ容量に対する課金ということです。つまり、Glacierは使った分だけに対する課金なので、無駄にお金がかかるということはありません。

ちなみに、10GBまでは無料で利用することができます。

アップロードリクエストの料金

GlacierへのアップロードはAWSのSDKを利用して行われます。そのときに利用したアップロードリクエスト数分だけ料金がかかります。料金は、1,000リクエスト当たり0.05USDです。

リクエスト数の計算方法は、次の章で説明します。

取り出し料金 & 取り出しリクエストの料金

データの取り出し時に課金される料金です。3種類の料金プランが用意されており、取り出し時間に応じて値段が異なります。

  • 迅速 :0.03USD/GB、クエリ(250M未満)の実行時間が1~5分
  • 標準 :0.01USD/GB、クエリの実行時間が3~5時間
  • 大容量:0.0025USD/GB、クエリの実行時間が5~12時間

一般的な利用ケースでは、標準か大容量で良いと思います。ビジネス利用では早急なリストアが必要な時はあるかもしれませんが、個人利用の場合はそこまでリストア速度を求めないと思うからです。

Synology NASのバックアップでの実際のデータ容量とリクエスト数

実際にSynology NASからGlacierへデータのバックアップを作成して、どの程度のデータ容量とリクエスト数が発生するのかを見ていきます。

3種類のディレクトリを用意して、ファイルの種類とサイズに応じた変化を確認していきます。利用する3種類のディレクトリは下記です。

  • テキストファイルやpdfファイルがメイン。各ファイルサイズは小さめ
  • 画像のみ。各ファイルサイズは3~4MB程度
  • 1つの動画のみ。ファイルサイズは2GB弱

テキストファイルがメインのディレクトリ

テキストファイルやPDFファイルがメインのディレクトリをバックアップするときのリクエスト数などを確認していきます。今回対象とするディレクトリは、4.1MB、34ファイル、5フォルダです。NASから確認できるプロパティは下記です。

これをGlacier Backupアプリからバックアップを取り、ログを確認します。ログはGlacier Backupアプリから見ることが可能です。

ログは下記で、3.34MBのファイル容量で34回のアップロードリクエストが呼ばれたことがわかります。また、backupタスクが約20秒で終了していることも確認できます。

Information	2021/02/21 15:00:04	[Request Records] Region Oregon: sent 1 list vault request(s), 34 upload request(s), 0 retrival request(s), 0 delete request(s), uploaded 3.34 MB file(s), retrieved 0.00 bytes file(s).
Information	2021/02/21 15:00:04	[backup] Backup task was finished successfully.
Information	2021/02/21 14:59:41	Start to backup task [backup].

推測するに、ファイル数=アップロード回数のようです。

では、実際にAWSのコンソール画面で、Glacierのボールト(vault)を確認してみます。ちゃんとバックアップが成功していますね。また、更新時間から、NASのバックアップからGlacierへの反映までに13時間近くかかったことがわかります。

ファイルサイズはNASのデータ容量と同程度ですね。ちなみに、”_mapping”サフィックスが付いているファイルは、SynologyNAS内のファイルとGlacier内のファイルを結びつけるためのファイルらしいです。

画像のみのディレクトリ

次に、画像ファイルが3つ入っているディレクトリのバックアップをしてみます。一つのファイルのサイズは、3~4MB程度です。

こちらのバックアップログは下記です。15秒で、4回のアップロードリクエストが行われています。ファイル数より1回多いリクエストが行われています。どうやら画像ファイルでは、ファイル数とリクエスト数は一致しないようです。

Information	2021/02/21 19:23:05	[Request Records] Region Oregon: sent 1 list vault request(s), 4 upload request(s), 0 retrival request(s), 0 delete request(s), uploaded 11.29 MB file(s), retrieved 0.00 bytes file(s).
Information	2021/02/21 19:23:05	[backup_3jpg] Backup task was finished successfully.
Information	2021/02/21 19:22:50	Start to backup task [backup_3jpg].

Glacierのボールトは下記です。しっかりと保存されていることがわかります。また、こちらもデータ容量はGlacierとNASでほぼ同じようです。

動画ファイルのみのディレクトリ

次に、1.9GB程度のMP4ファイルが一つだけ入っているディレクトリのバックアップを行ってみます。

ログは下記です。1ファイルにも関わらず5回もリクエストを送っていることがわかります。

Information	2021/02/21 19:41:33	[Request Records] Region Oregon: sent 1 list vault request(s), 5 upload request(s), 0 retrival request(s), 0 delete request(s), uploaded 1939.47 MB file(s), retrieved 0.00 bytes file(s).
Information	2021/02/21 19:41:33	[backup_1mp4] Backup task was finished successfully.
Information	2021/02/21 19:30:25	Start to backup task [backup_1mp4].

Glacierのボールトの状況は下記です。保存されていますね。こちらもデータ容量はNASとGlacierでほぼ同じです。

動画ファイルでは、アーカイブ数が1にも関わらずリクエスト数が多いです。ファイルのデータ容量が大きい時は、分割してデータを送信しているのかもしれませんね。

まとめ

この記事では、まずGlacierの料金体系を説明しました。Glacierではデータ容量のみではなく、リクエスト数にも課金されます。利用料金の見積もりではリクエスト数とデータ容量の2つを考慮する必要があります。

また、ファイルの種類とサイズが異なるディレクトリを用意し、Synology NASのGlacierへのバックアップログを確認しました。データ容量はNASとGlacierでほぼ同等であること、リクエスト数はファイルの種類やサイズに応じて変化することがわかりました。

データ容量に関する利用料金の見積もりは簡単そうです。一方で、リクエスト数については十分に調べる必要がありそうです(マルチパートアップロード機能が使われているのかな?)。Glacierには10GBの無料枠があるので、そちらでリクエスト数の見積もりをしてみるのが良いかもしれませんね。

今回は取出しリクエストについては特に触れませんでした。取出しに関しては、他の記事にまとめようと思います。

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